3年間続いた新型コロナウイルス感染症がようやく落ち着く兆しが見えてきました。しかし、今なお、福祉職員は最前線で緊張の日々を送られています。心から感謝を申し上げます。
私たちは、福祉施設においては「消防計画」に加え、災害に備えた「避難確保計画」、「事業継続計画(BCP)」、「福祉避難所計画」が必要であることをアピールしてきました。新型コロナウイルス対策の辛い経験から得た感染症対策も、引き続き強化しなければなりません。
この状況を受け、2021年度に厚生労働省が介護保険事業所、障害福祉サービス事業所に3年以内のBCP作成を義務付けました。2021年5月の災害対策基本法改正により、避難行動要支援者の個別避難計画作成が市区町村の努力義務となり、福祉関係者の積極的な関与が強く期待されています。当事者を中心に、福祉と地域コミュニティが連携して、平時にも災害時にも安全で安心な地域共生社会づくりを進める大きなチャンスとも言えます。
2021年度は、(一財)消防防災科学センター様からの委託事業により、三重県、長崎県、奈良県、岡山県、鳥取県、愛媛県、熊本県の7県で福祉避難所マニュアル作成研修を実施しました。2022年度も7県で福祉避難所マニュアル作成研修を行います。ただ、全国の市区町村で福祉避難所マニュアルを作成しているのは15%程度に過ぎません。そこで、今年の出水期に少しでも多くの福祉避難所が開設されることを願って、本協会の「福祉避難所開設・運営マニュアル」を無償で公開しました。すでに150以上もの自治体、福祉施設がダウンロードされました。
また、福祉BCPについても、自治体、社会福祉協議会、学校、地域団体やボランティア団体等から研修依頼が多くなり、さらには大手企業とも連携してオンライン研修が始まっています。
昨年は、企業版ふるさと納税を活用して、秋田県男鹿市と島根県浜田市で停電対策の給電器、水不要のバリアフリートイレ、防災用品を組み合わせた福祉避難所を整備できました。今年も進行中の案件がいくつかあります。全国でこの取り組みが普及し、災害時に福祉施設や特別支援学校が助け合える仕組みづくりを進めてまいります。
乳幼児、妊産婦、障がい者や高齢者と地域とのつながりが弱くなり、社会インフラに依存する都市型社会にあっては、「地域共生社会づくり」が極めて重要です。
今後とも本協会に対し、関係者各位のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
2022年6月吉日
一般社団法人 福祉防災コミュニティ協会 会長 浅野 史郎