2020年9月3日(木曜)
一般社団法人福祉防災コミュニティ協会
代表理事 鍵屋一
9月4日(金)正午現在、観測史上、最大級の台風10号が九州・沖縄地方に接近している。なんとしてでも、一人残らず無事に避難して命を守っていただきたい。
しかし、新型コロナウィルス感染を危惧して避難が遅れることが心配だ。毎日、メディアでコロナの脅威が大量に伝えられると、情報過多となり、必要以上に不安や心配な気持ちになりやすいからだ。今は、コロナを忘れて、命を守るときだ。
住民のみなさまへ
まずは、ハザードマップを確認してほしい。家が大丈夫な人はもちろん家にとどまろう。都市部のマンション高層階などがそうだ。ただ、停電と断水の可能性はあるのでトイレ、水、食料、灯りの確保などが必要だ。
家の浸水リスクが高ければ早めに避難しよう。風水害の避難は長くならないので、車避難もいい、遠くのホテルや旅館に行くのも良い、マンション住まいの子どもを頼ってもよい。早めに避難する方が多くなればなるほど、指定避難所となる学校への避難者は少なくなり、結果としてスペースの確保、共有空間の衛生向上、物資の確保などコロナ対策がしやすくなる。
自治体職員のみなさまへ
まずはご自宅、ご家族の安全確保が最も重要だ。できれば今日中、遅くとも明日の午前中には安心して災害対応ができる状況をつくっていただきたい。
次に、台風が来ても人的被害をなくすよう準備をしておこう。それには、避難行動要支援者の早めの避難が鍵になる。経費の心配をせずに、災害前に安全な親族・知人、福祉施設やホテル・旅館など環境の整った場所に直接避難を斡旋していただきたい。
また、自治体職員は、台風後の避難生活支援が重要で長期戦になる。今から、応援職員確保の手順を確認し、事前に応援依頼をしておくことが大事だ。応援職員に準備と心構えの時間を与えることができる。
そして、今日はしっかりと休んでいただきたい。
福祉施設のみなさまへ
福祉施設の方は早く逃げるのが大事だとわかっているが、高齢者や障がい者にとっては、環境が変化しない、すなわち移動しないほうがよいので、単に早い避難とはならず悩ましいところだ。
しかし、台風10号は、50m級の暴風(瞬間最大風速で80m!)の巨大台風だ。逃げるしかない。
まず、台風の暴風雨圏が予測され、ハザードマップでリスクが高く、上階への避難でも危険な福祉施設では、利用者を早めに屋外に避難させなくてはならない。暴風雨になってしまうと避難行動そのものが極めて危険だ。
ところで、良い避難場所は確保されているだろうか。認知症の方は、ベッドが必要で、プライバシーの確保ができないと不安定になり、トイレも近くないとだめなので、学校への避難では福祉サービスの継続が難しい。できるなら、安全な場所にある知り合いの福祉施設に要介護度が高い人だけでも、早めに避難させていただきたい。そのような場所が思い浮かばなければ、早急に自治体に相談いただきたい。
暴風雨圏から離れていても、西日本では大雨、洪水、高潮、土砂災害のリスクが非常に高い。やはり、早めに安全を確保することだ。
もちろん早い全員避難が望ましいのだが、現実を踏まえれば、段階的な避難はどうだろうか。警戒レベル2の段階で、避難確保計画やマニュアルを確認する。警戒レベル3(避難準備・高齢者等避難開始)で持出し物資を車に積み込み、要介護度が低い方と一緒に避難する。避難させても災害にならなければ空振りといわれるが、真剣に訓練する絶好の機会ととらえたい。そのうえで、状況を見て要介護度が高い方を、大勢の職員と地域住民の協力を得て避難させる。なお、明らかに被害が出そうなら、警戒レベル3で全員避難である。
残された時間は少ない。これまでの福祉施設の被害を思い出し、全力で利用者と職員を守り抜いていただきたい。
みなさま、くれぐれもご安全に!
連絡先
(一社)福祉防災コミュニティ協会
TEL:044-455-6230(平日9時~17時 土日祝日は休み)
メール:fukushibousai@gmail.com